椅子の修理をしました、まだまだ永く使っていただけます
目次
椅子を修理させていただきました
脚が折れてしまった椅子の修理をさせていただきました。
脚と背付きのアームを繋ぐ部分がボッキリと折れています。
ご依頼時にメールでいただいた写真を拝見した時は、繊維に沿って折れている思いましたが、そうではなさそうです。背中に直接脚が接合されているので、足の付け根の部分にかなりの圧力がかかったのだと思います。
それに加え、木の繊維的にも弱い部分だったのかもしれません。
数年前に折れて使えないまま物置台と化してしまったようです。
もう一度使える椅子に再生したいということで、今回修理のご依頼をいただきました。
折れた部分を接着して直します
完全な修理の場合、折れた脚を作り直すところからになります。
修理の場合、作業時間で修理費をお出ししますので、作り直すとかなり高額な費用になります。
また、量産品の場合作りを完全にコピーすることが非常に難しいので、完璧にオリジナルに仕上げたい場合は製作したメーカーに依頼するのが良い方法です。
完全な修理の場合、修理代の他に往復の配送料などが必要になります。合算すると新品の椅子が買えていまう価格になることもあります。
お客様のご要望で、使えるようになれば良いということでしたので、今回は接着という方法を取らせていただきました。
接着剤はエポキシ系を使います
接着剤は木工で通常よく使う白ボンド(酢酸ビニル樹脂系エマルジョン形)を使っても良いですが、今回はしっかり割れているので接着力の強いエポキシボンドを使います。
エポキシはA剤(主剤 )とB剤(硬化剤)2つを同じ量で混ぜ合わせて使います。正確な量を計って混ぜ合わせます。
混ぜる時は紙コップを半分に切って使うと便利です。
両剤共に無色透明ですが、混ぜ合わせると乳白色になります。
しっかり混ぜ合わせたら接着面に塗ります。
クランプでしっかり固定します
接着面にしっかりボンドを塗り、養生テープで仮固定します。
更にしっかり固定すためにFクランプで当て木をして固定します。
ずれて接着しないように多方向から同時に締めます。
白ボンドは水性なので水分が乾燥したら固まります。それに対しエポキシボンドはA剤(主剤 )とB剤(硬化剤)を混ぜることにより化学変化で固まります。
工房で使っているアルテコのF-30Cの固まり始める時間は20〜30分くらいです。その間にクランプで固定します。F-30Cの硬化時間は白ボンドより早いので作業効率が良いです。
エポキシボンドは種類により硬化時間は様々です。5分くらいで硬化する速乾のものから1時間ほどかかるものもあります。用途に合わせて使い分けができます。
ボンドが固まったら研磨します
2時間ほど置きボンドが固まったらクランプと養生テープを外します。
余剰のボンドは固まっているので鑿や小刀で削ぎ落とします。椅子のボディーまで落とさないように注意します。
ボンドが大体取れたら紙やすりで研磨して表面を整えます。多少表面を削るのは仕方がないですが、形が変形しない程度に注意しながら研磨します。
ダボを打って補強します
接着だけでは少し不安があります。
1度折れている部分なので、木の弱い部分だと考えられます。接着したところはボンドで持っても、その周りから再び折れる可能性があります。
更に強度を出すためにダボを打ち込み補強します。
ダボを打ち込む位置を決めます
割れの位置やドリルの角度を考慮して穴あけの位置を決めます。
ケガキゲージで位置を決め墨線を引きます。
キリでポイントに印をつけておきます。
ドリルで穴を開けましす
まずは細いドリルで誘い用下穴を開けます。
その後8ミリのダボ穴を開けます。
斜め打ちなのでブレないようにしっかり押さえながら穴を開けます。
ボンドを入れダボ打ちをします
ここでもエポキシボンドを入れてダボを打ち込みます。
斜めの下穴なのでどうしても多少ブレるため穴が大きめに開いてしまいます。
エポキシボンドは水性ボンドのように硬化するときに痩せることがありません。穴の隙間にボンドを充填する効果があります。
水性ボンドは固まるときに水分が木に吸収され痩せて隙間ができてしまいます。
ボンドが隙間にしっかり充填されればより強度が増します。
ダボを切りヤスリをかけて整えます
ダボ切り用のアサリの無い鋸で、飛び出たダボをカットします。
通常の鋸の場合、切断能力を高めるために歯を叩いて曲げ角度を付けています。これをアサリと言います。
角度が付いている分のこ板よりも歯が出ています。
そのため通常の鋸でダボ切りした場合、家具の本体に傷をつけてしまう恐れがあります。
タボ切り用の鋸にはアサリをつけていないため、家具の本体にしっかり付けて鋸を引いてもギズが付きません。
ダボを切った後、#400の紙やすりで整えて表面をきれいに仕上げます。
脚が折れたまま数年放置していたため、若干木が変形したのか、エッジが欠けたのかで多少継ぎ目が分かります。
強度には影響ないレベルなので問題なしとします。
塗装をして仕上げます
元のウレタン塗装に合わせて工房で使用している木固めエースで塗装しています。工房の一部の木の食器でも使用している安全性の高いウレタン塗料です。仕上がりは皮膜タイプではないのでオイル塗装のようなナチュラルな見た目に仕上がります。
塗装が乾けば完成です。
まとめ
今回の修理について、時間をかけずになるべくコスト抑えることを重視で修理いたしました。
修理は作業時間で価格が決まるので、丁寧な修理になってしまうと元の家具よりも高くなってしまう場合があります。
親族の形見や、他に無い唯一のものの場合お金をかけて完璧に修理しても良いと思いますが、日常遣いの物の場合この先しばらく使えるような修理で十分だと考えます。
見た目は修理跡が丸見えですが、これはこれで道具として大事に使われている証の様にも見えます。まだまだ活躍してもらうことを願います。
修理についてご希望の方はこちらからお問い合わせください。
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